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悪い女ほど、清楚な服が似合う

林真理子著『更衣室で思い出したら、本当の恋だと思う』
なんとなく名前に惹かれて、小説の裏にあるあらすじを目で追ってみた。

「不倫をやめられない美容マニア」 

なんて言葉が目に入ったものだから、なんだか他人事ではない気がして、買わなくてもいいような本を買ってしまった。 

結論から言うと、まあ、なんとなく爽やかに軽快に、限りなくポジティブに物語は締めくくられていて私はがっかりしてしまった。 

だって、現実ってそんなに甘いものじゃないでしょ。 
もっと絶望的で、一縷の希望も見えないようなものが読みたかったなあ。とか思ってみる。 
奥さんへの嫉妬とか、煮え切らない態度の彼への怒りとか。 
私が執筆したとしたら、普通の恋愛小説じゃなくて泥沼恋愛ミステリー小説になっているか、犯罪者の独白本になっていただろう。 

ただ、主人公が彼のために年齢に抗って美に執着する姿や、ふとした瞬間に「奥さんと私、本当にかなしいのはどっちなんだろう」と考える姿は今の自分とよく重なる。超現実的。 

それから、男のずるさもよく描かれている。 
「嫁とは終わった」と言いつつ早10年、主人公には彼が奥さんと離婚することは毛頭ないと分かっていても、それでも会いに行ってしまう。 
あぁ〜、わかるよわかる、でも「いつ離婚するの?」なんて怖くて聞けないんだよね、答えは分かってるから。 
と、妙に共感してしまった自分もいたり。 

男はずるい。 

こうして言葉巧みに操られて、今日も私は彼のことを考える。 
きっと彼にとって、私は退屈な結婚生活のスパイスでしかないんだ。 

自分のことを好きな、手軽な若い女。 
背徳と刺激を味わって、退屈な日常から少しでもエスケープしたい男のための、取っ替えのきく代用品でしかないんだ。(あら、どこかで聞いたことある台詞) 

本気なのは私だけで、彼にとっては若くて従順なところが魅力なんだろう。所詮ただの火遊びでしかない。 

そうは理解していても、頭はつねに彼のことで一杯で、身体はいつ彼に抱かれてもいいように以前より磨かれ、足は彼に誘われれば真っ直ぐ向かってしまう。 

彼から向けられる言葉がいつか偽りになることが分かっていても、それでも今は信じたい。 
そう自分に言い聞かせて、瞼をそっととじてみる。 

脳裏には彼の大きな手や、広い背中や、優しい瞳が浮かぶ。 

次に会う時には、清楚で大人っぽいワンピースを着て、彼を驚かせよう。 


彼が見惚れてしまうような、いい女になって、後悔させてやるんだ。