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空が。
真っ赤に燃えている。
煙が白く立ち上り、まるで絹のヴェールのようだ
禍禍しい光景な筈なのに、
わたしのこころは、わたしのこころは、
ああ、乱される。
天に向かい真っ直ぐ伸びた炎は馬の鬣の如く、
煌煌と群青色の空できらめいている。
いつもより強い風のせいか炎は広がる。
真っ赤なルージュを引くように、炎は勢いを増して富士の麓を侵食してゆく。
わたしはここからそれを眺めているだけ。
何もしない。何もできない。
広大な緑を紅に染め上げる、そこに散らばった点々としたルビーを
金魚のような虚空なひとみで見つめるだけなのだ。
誰かのロマンチックな悪夢を見ているようで、
(あら、受け売り。)
恐ろしいような愉しいような、
脆くて悲しい、
極めてサディスティックな願望である。