■
愛しさを自分の中に閉じ込めるたびに、憎しみ悲しみ切なさが入り混じった感情がふつふつと腹の底に現れる。
「彼氏とはどう?」「結婚は考えてるの?」
なんて夕飯を食べながら先輩の前でわざと後輩に聞いてみたりして。
「ぼちぼちですよ、もう結婚したいんですけどね」
ハイ80点の回答。先輩の顔は見ない。先輩は何も言わない。目の端で箸が一瞬止まったようにも見えたけど気にしないで私は続ける。
「え~!結婚式するときは呼んでね!」
「もちろんです!宮下さんも先輩も呼びますよ~」
100点満点の回答ありがとう。拍手喝采。
先輩はどんな顔をしているだろうか。どんな気分だろうか。ねえ悲しい?さみしい?辛い?どんな気持ち?
言いようのない泥のような感情がまとわりつく。もっと傷つけ。
愛情が方向性を見失って、私の中で暴力的な感情に変化する。最低だとは思うけれどやめられない。
好きが嫌いになりまた好きになる、それを飽きもせず延々と繰り返し自嘲的になる。馬鹿だと思う。いつになったらやめられるのだろう。
■
■
「どうしてあんな女に私が」
朝起きたとき、全てが夢だったらいいなという思いを込めてラインの履歴を見返した。5:47。白いカーテンの向こう側が明るいことは辛うじてわかる。ぼんやりとする視界にお馴染みの黄緑色のアイコンが浮かんで、トーク履歴が表示された。通話履歴も私の情けないトーク履歴もそのまましっかり残っていた。夢ではなかった。
「 どうして 」
急上昇急降下を繰り返しブレーキの壊れたジェットコースターの如く、情緒が不安定な私の頭の中に浮かんだ言葉はこれだけ。混沌が飽和した頭の中には疑問符しか出てこなかった。
「 どうして 」
あの子の顔を思い浮かべる。
美人かブスかどちらかにカテゴライズしろと言われたら、迷わずブスに仕分けされるであろう容姿。丁寧に手入れされてるとは言えない髪と明らかに整えられていない眉毛。婚活パーティーで再開したときには、ベースメイクやアイメイクをおざなりにして真っ赤な唇だけが不気味に浮いていた。正直、年齢よりも幼く見える彼女には不釣り合いだった。ぷっくりと張った頬と芋虫風情の10本の指が鮮明に脳裏に焼き付いている。身振り手振りを交えて黄色い声でキャッキャと笑い、自分のことを名前で呼ぶあの子。反芻したところで、やっぱり浮かぶのは疑問符だ。
「 どうして 」
私が彼女に負けてるのは年齢くらいだろう。
正直、容姿も学歴も立ち居振る舞いも圧勝だと思っている。それらをも凌駕するほど、男にとって年齢が若いというのは魅力的なことなのだろうか。
同時に、そんな若いだけが取り柄のセンスも教養のかけらもない田舎娘にコロッと傾いた彼のことまで嫌悪しそうだ。吐き気がする。言いようのない不安と行き場のない怒りがかなしみを助長させた。
6:20。
ベッドから投げ出した自分の浮腫んだ足に目が行く。2年前はこんなじゃなかった。
そう、彼女の年齢のときは。
次の瞬間、黒い泥を孕んだ波が大きくうねって、私を飲み込む。
私は負けた。
膝から崩れ落ちて、大声で泣いた。時に嗚咽し、身体が震えた。女として負けた。ボロボロになった自尊心とパンパンに浮腫んだ足。涙でまみれた顔には髪の毛が纏わり付いて、今この瞬間宇宙で1番惨めな人間だなと自嘲的に笑った。
26歳の失恋で、こんなにも傷つくなんて。
ピュアかよ。もう、歩けないや。
無題
色々考えた。具合が悪くなるくらい悩んだし憎んだ。でももう疲れた。少しだけ期待してしまってた自分、お疲れ様、そして御愁傷様。もうあの人は戻ってきません。新しい幸せの中にいて私のことなんか忘れてしまってるから。私ももう忘れよう。過去はなかったことに。前を向いて自分が幸せになるために。忘れよう。さよなら大好きだった人。歩き出さなきゃ。今目の前にいる人を、私を好きでいてくれる人を大切にしなきゃ。さようなら。さようなら。さようなら。
無題
私は実は愛している
あなたの嘘と幻を
14cmになりました
嘘つき野郎は今日も幸せそうです
子供は愛せない
堕ろしたい
子供が生まれたらすぐ離婚できる
子供は抱っこしてない
子供の名前なんて考えてない
全部嘘
全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部全部
嘘つき
迎えにきてくれると思ったのに
許さない
笑う
ストーリー子どもばっっっっかりですね
すっかり子煩悩パパですね。
ワロタ